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| 「統計力学」は物理の中では比較的高度な内容で,物性物理,素粒子物理,半導体工学などのために教えられることが多く,そこでは量子統計まで含んだ議論が行われることが多い。そのために,量子論を学ぶ理工系の学部3年以上の学習課題になっている。しかし,古典統計だけでもそのカバーする範囲は広く,特に化学や生物への応用例も豊富にある。本書は学部1年程度の力学,静電気学,数学(微分積分、確率論)の知識から,生体分子の統計力学を論じたものであり,特に確率論に基づく点がユニークである。統計力学の基礎的な問題に関してはさまざまな類書で十分に論じられているので,ボルツマン分布を基本的な確率分布関数として認めたうえで,それからどのように自由エネルギーやエントロピーといった,初学者に難しい概念を理解させることができるか試みている。その際に,いきなり一般化せずに,1次元系やブタンといったシンプルな系での議論を,かなり技術的な詳細に至るまで丁寧に解説しており,初学者には分かりやすくなっているものと思われる。また,統計力学をある程度以上分かっている読者にも,その説明法などで示唆的なところがあるだろう。また,本書を更に特徴付けているのは,通常の統計力学の議論は平衡系についてのもので終わることが多いが,最初からダイナミクス(動き)と統計力学の関係を自然なものとして導入していることである。本書の後半ではやや程度の高い確率過程論についても,生体分子の文脈で平易に論じている。この部分はいわゆる「非平衡統計力学」に関連する部分であり,その際に「経路の確率」という概念を導入している。これは現在盛んに研究されるようになった「レアイベント」と呼ばれる遷移現象を調べる際には基本となる概念であり,このことを議論している国内外の類書はないものと思われる。そこも本書の重要なポイントである。
5,280-(税込)
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生体分子の統計力学入門 タンパク質の動きを理解するために
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